悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

散歩

    思い悩んだりしていると(思い悩むって言葉はぜんぜん思い悩んでなさそうな言葉に思えちゃう。)、文章がどんどん観念的になっていってしまう。内に引きこもっていって強い言葉が前に迫り出してくる。避けようと思って避けられるようなものではないかもしれないけど、そういう時に書いた文章をどこに置いておくかというのは大事なことだし、そうでない文章も書くことができるかもしれない。

    犬と散歩した。20分くらいだから散歩とは言えないかもしれない。家の近くに展望台があって、展望台の下はちょっとした公園になっている。隅にある東屋に灰皿があるのだけど、公園で人と会うことがなく、使っていい灰皿なのかわからない。毎回綺麗になっているので、使っていいということにしている。誰かが掃除しているということだ。犬と散歩に出かけて5分くらいで公園につき、2本くらいタバコを吸って家に帰る。半分の時間はタバコを吸っていることになる。犬は私がタバコを吸っているときは近づいてこないので、タバコの臭いが嫌いなのかもしれないと思ったりしたこともあったけど、そもそもいつだって私には近寄ってこない。とはいえ、もしかしたら、ふだんから私にはタバコの臭いがついていて、犬はやっぱりタバコの臭いが嫌いなのかもしれない。犬はリードが目一杯にピンと張ったところで、私に背を向けて道路の方へじっとしている。車が通ると少し反応した。尻尾が微かに揺れた。私はベンチに腰掛け、腿の上に置いていたリードを握った手を犬の方に向けて伸ばした。すると、ピンと張っていたリードが緩んで地面についた。犬はやはり私に背を向けたままさらに私から遠ざかろうとした。リードが緩んだぶんだけ私から遠ざかり、またピンと張った。犬は私の方を向いた。わずかに開いた口の間から白い息が小刻みに吐き出されていた。