悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

鎌倉

2月にKと鎌倉へ行った。新宿から湘南新宿線に乗って鎌倉駅へ。乗り換えはせずに済んだ。休日の鎌倉は人がいっぱいいた。江ノ電に乗って一駅ごとに降りてはお店に入ってビールを飲みつつ、江の島からロマンスカーで新宿まで帰ってくるのがとても良いと思うけど、江ノ電も人がいっぱい。とてもじゃないが乗る気にはなれない。鎌倉に来るのは休日ばかりなのでいつもこうなる。仕方なく歩き回る。鎌倉駅を中心として、山の方へ行くか、海の方へ行くか。今回は海の方。前回も海の方、だったので次回はぜひとも山の方にしよう。Kがいろいろと雑誌やらなにやらで下調べをしている場合は、とりあえず行ってみる。ごはんを食べる所なんかは、せっかく調べてきても休日は人がいっぱい。並ぶかどうか迷う。一度並んでみて、やっぱり別のところにしようと列を離れて、やっぱり並ぼうと列に戻ろうとすると、最初に並んだときよりも人が増えていて、結局あきらめる。小町通は避けて、反対側をぶらぶらしてどうにか昼食にありつく。意外とおしかったりするとうれしい。

お昼を食べてもまだ一時過ぎくらいで、どうしようかということで山の方か海の方かという話になる。で、海の方へ。あみだくじみたいにいい加減に路地を曲がっても、海に向かっているつもりになって歩いていくとなんとなく海に着く。海までの道は、人がたくさん歩いているし、車もたくさん通るから、ふらふらおしゃべりなどして歩いていると危ない。危ないから避けるように、大きい道をそれて、小さい道へ入っていく。線路を電車が通る。坊やが不思議そうな顔して窓からこちらを見ていた。車内も混んでいて、坊やはお父さんに抱きかかえられているのか、宙に浮いているみたいだった。細い道へ行くと、住宅が増えて観光地っぽい感じが薄くなる。ちょっと静かで生活感がある。ここを歩いている観光客はわれわれだけじゃないのかしらなどと思っていると、ひょこっと観光客風の人が現れる。鎌倉駅周辺なんてたいして広い範囲ではないのだから、観光客がいない場所などないのだ。さっと人力車が通りかかる。ということはこのあたりにも名所のようなものがあるのかもしれないとKが言った。人力車をひいている男の人は真っ黒に日焼けしてたくましかった。座席には誰も乗っていなかった。ならば名所はないだろう、どこかに向かっているのかあるいはどこかから帰る途中なのだろう。そのときはKに対して何も言わなかったが後々そう思った。

由比ヶ浜は風がとても強かった。波が高い。サーフィンをしている人がいる。浜辺にはあまり人がいなかった。なんといっても風が強い。波打ち際のカップルが自撮棒で写真を撮ろうとしているのだが、打ち寄せてくる波と風のせいで悪戦苦闘している。可笑しいので近づいていくと、二人が持っていたのは自撮棒ではなくて串に刺さった鳥のからあげだった。宙に向かって鳥のからあげを振っている。ますます可笑しいので声をかけようと思ったがKがなにか言うので、振り向くとなにかが顔の横を通りすぎていった。びっくりした。カップルの悲鳴がきこえた。見ると、とんびがからあげを盗ってしまったのだ。カップルは笑っている。はじめからとんびを誘っていたから変な動きをしていたのだ。私が悲鳴として聞いたのは歓声だった。

そういえば、次は「青い花」の聖地巡礼のようなこともしたいなと思った。

青い花(1)

青い花(1)