悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

ぼくが警察官だったころ

むかし、ぼくがまだ警察官だったころ、県道を集団が走っているとの通報があった。夜だった。暴走族のようななにかで、バイクがまとまって走っていた。パトカーに気がつくと、けつもちというのだろう数台が低速で蛇行運転をはじめた。彼らはみな二人乗りで、後ろに乗っている方は花束を持っていた。

仲間が少年院から出て来たんだって。係長は言った。パトカーのライトで花束と白い膝まで長さのあるブーツが光っている。夜は雨上がりだっただろうか。バイクはスラロームをやっているみたいにじぐざくと車体を左右交互に倒しながらゆっくり進んでいく。花束を持った少年は花束を持った方の手と何も持たない方の手をばんざいのかたちに上げたり下げたりしていた。ワッショイ、ワッショイ。

係長が少年らのすかした態度に語気を強めてマイクに向かいながら、ぼくらはけつもちを追っかけて行き、彼らが管轄外へ出て少しだけ追ってから通常の業務に戻った。ぼくは花束はいいなと思った。花束をあげたことももらったこともない。彼らがもらった花束を大事に家に持ち替えって瓶に移したり水をあげたり、ときおり見つめてうっとりしたりするのは想像できない。立ち寄った飲み屋で置き忘れたり、踏んづけちゃったりする方が想像し易いけど実際はどうなのだろう。花束をあげたりもらったりすることについて、彼らの間でのルールがあったりするのだろうか。

5本のバラと季節のお花のリボンアレンジメント
ぼくはあの晩、彼らを追っかけて行って首根っこをがっちり掴んでしっかり訊いてやるべきだったのかもしれない。モリッシーグラジオラスの花をぶんぶん振り回しているのとか、たけしの映画で花束に銃を隠していたのとか思い出したりした。