悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

読書日記

09/26

 

仕事が多い。うんざり。雨が降っていた。
仕事が多くて、うんざり、という話を電話ですると、電話相手の友達は凄いブラック企業に勤めていてもっとうんざりするような事をさせられているのだという。


冬川智子のマンガ『水曜日』を読む。

女子高生の日常を描いたマンガ。主人公は、高校デビューを狙って意気込んでいたのだけど、なんだか上手くいかない。本人が「おしゃれ組」と名付けた、いわゆるスクールカースト上部層の人たちの楽しそうなさまを羨ましがったり、自分と同じレベルだと思っていた友人に次々と彼氏が出来て悶々とするようすがおもしろおかしい感じに描かれている。


主人公はB軍だと書かれている。A軍というのは「おしゃれ組」のことで、B軍はそれよりも下のことだ。とうぜん、もっと下もいる。「里美ちゃん」というクラスメイトが出てくる。主人公は彼女のことを自分よりも下だと思っている。鼻毛が出ていて身なりも気をつかっていないようにみえる。


鬱屈とした青春はキラキラした人たちに妬みを抱いたりしがちだけど、後々振り返ってみると、劣等感というか自分よりも「上」だと思っている人たちへの負の感情はしんみりした笑い話にもなる。ところが、自意識過剰ではしこい奴は、まさか自分はこいつより上だろう、という「下」の存在も認めているように思う。


『水曜日』で「里美ちゃん」が登場人物として居場所を得られるのは、処女ではないからだ。主人公は自分がまだ性体験がないことを気にしていて、「里美ちゃん」から経験があることを告げられた主人公は「里美ちゃん」のことを見下していたことに自覚しつつも「おしゃれ組」と同じように注意を向けるようになる。


「里美ちゃん」はB軍とは別の友達がいる場面も描かれるのだけど、別の友達たちはほとんど登場しない。主人公は、「里美ちゃん」とその友達たちのなかでは「里美ちゃん」があか抜けていることに気づくので、主人公のなかでは「里美ちゃん」よりもさらに下ということになるのだろう。だからか、特別注意を向けられることもなく、出番もない。


私はどの辺だろうか、と思う。なんとなく主人公に共感して、すごくわかるような気になってよんでいたけれど、はたしてどうか。
たしかに学生生活において、こいつよりはマシだろうなという目を向けていた奴らが何人かいたように思う。


もし学生時代の自分が惨めだったり、ダサかったりイケてなかったり気持ち悪かったりしたのはいいとしても、そのくせ自分に向けられたなめきった視線を別の人に向けていたということ、つまり嫌な奴だったのだとしたらすごくつらいことだ。せめて、私が見下していた彼も私を見下していてくれていたらまだ救いがあるんじゃなかろうか、と思ったけど、どうだろうか。


ちっとも友達がいないのはやっぱり嫌なやつだったせいなのだろうかと思った。もっともそのほうが救われるような気もする。自分の悪い行いのために悪い結果がもたらせれてしまったのなら納得もできるだろうけど、たまたま運が悪かったために今夜惨めな気持ちでいるのだとしたら、きっとかなしい。

 

 

水曜日 (IKKI COMIX)

水曜日 (IKKI COMIX)