悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

読書日記じゃない日記

その日

 

昨晩は台風が近づいていて、風の音がうるさく、眠れなかった。職場へ行くと、木が折れ、倉庫がひっくり返っていた。そのために一日を費やす。
『現代詩文庫44 三木卓詩集』、ミルン『クマのプーさん』を少しづつ読む。


先日、犬の散歩をしながら、チャットモンチーの「耳鳴り」を聴いていた。たぶん高校一年生のときに出たアルバムでよく聴いていた。私の周りに聴いている人はあんまりいなかった。クラスメイトに「どんな音楽きくの」と聞かれて「東京ハチミツオーケストラ」が好きだよと答えると「東京スカパラダイスオーケストラじゃないくて?」と返されたことを覚えている。


私に尋ねてきた男はいけすかないやつだったのでよく覚えている。その男は、村上春樹が好きで、童貞を小馬鹿にし、映画監督になりたがっていた感じの悪い気取った男で、大学を卒業したころに映画方面は挫折したらしいと聞き、いい気味だと思ったけれど、それはちょっとひどいような気もする。嫉妬心もあったのかもしれない。


どんな音楽をきくの、という会話ではふつうミュージシャンの名前を言うべきで曲名は言わないだろうから、きっと15歳の私はいつもこんな的の外れた返答をしていたために友達が出来なかったのだとも今にして思う。


もちろん、人気のあるバンドだったので、学校内に聴いている人はいて、たまに「良いよね」という声やスピーカーから小さくメロディが聴こえたりした。「生命力」以降はもっと増えた。私は人に話しかけたり出来ない人だったので、ただ「そうかあの人たちも好きなんだ」と思うだけだった。学校内にはチャットモンチ―が好きな人が何人もいて自分だけ素晴らしさを共有できていないような気分になった。ライブに行ったりもしなかった。


大学生になると、クラスにチャットモンチ―が好きな人がいた。ライブにもよく行ってるよと言っていた。ボーカルの人をえっちゃんと言っていた。たしかに雑誌やネットにはそういう風に書かれていた。私はボーカルの人と言っていたと思う。
メンバーが減ってからのアルバムはあんまり聴かなかったと思う。特に理由はない。昔は、最初のころの方が暗い感じあって暗い感じが好きだったから、と思っていたけど、はたしてどうか。


歩きながら、いまだに「恋愛スピリッツ」の意味がいまいちわからないことにびっくりしたのだった。チャットモンチ―のうちで一番好きな曲のうちの一つだけど、正直わからないような気もする。そのことを日記に書こうと思ったところ、学生時代のよけいなことを思い出したりして暗い気持ちになった。そういう意味では私にとってチャットモンチ―は青春と結びついている気がした。