悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

読書日記

12/25

仕事。
あと一週間なので頑張りたいところ。とても寒い。 
長谷川四郎が「ぼくの好きな文章」という短い文章のなかで、文章が好きな作家として柳田國男森鴎外をあげていたのは意外。 「小説」ではなくて、「文章」というところがポイントだろうか。


高原英理編『ガール・イン・ザ・ゴシック 少女のためのゴシック文学館』(講談社)もパラパラと読んでいたのだけど、よかった。アンソロジーで後ろのほうに編者による作品ごとの短い解説がついているのだけど、江戸川乱歩の「魔法人形」について書かれた文章がとくに良い。「魔法人形」は探偵小説なのだけど、この本ではは解決編はのせずに謎の部分だけが載っている。 

私にはその興醒めな現実への着地が不要である。人を美しい人形にしてしまう魔法への想像と、恐れつつその魔法に惹かれてゆく少女の心の慄きだけを読めればよいと思い、この小説の最も魅力的な謎の抄出した。これを解明されるべき物語の前半部とは考えず、暗い憧れに満ちた、結末のない幻想小説として読みたかったからである。


会社の昼休みにはひさしぶりに後藤明生もちょぼちょぼ読み進めていて、いまは『40歳のオブローモフ』。団地とそこでの噂話について。とても楽しい。 
しかし、それにしても、アーリー・バードブックスは偉大だと思う。後藤明生のたくさんの作品が電子書籍で気軽に読めてしまうのだ。そのうち、通学電車で飴でも舐めるみたいに気軽に読んだ不遜で生意気なこどもたちが現れちゃうんじゃないかと、妄想しつつ寝ることとします。

 


12/26

仕事。 
ミルハウザー「夜の姉妹団」と『現代詩文庫49 菅原克己詩集』を読む。菅原克己の詩はけっこう好きかもしれない。 
「夜の姉妹団」はそれぞれタイトルがついているいくつもの短い文章から構成されている。街の少女たちが夜な夜な何かをしていて、語り手である〈私〉をはじめとする周囲の大人たちがあれこれと反応する話。 
語り手は、姉妹団の活動がいまいちはっきりとはしないなか、〈もしかして私たちは間違った秘密を、私たち自身が焦がれている秘密を探しているだけではないだろうか?〉という問いをもつ。 
いったいこの少女たちはなにをしているんだろう、という興味を持って読み進めるとき、語り手に近い位置で小説を読むことになる。 

仕事の昼休みに読んでいる後藤明生『四十歳のオブローモフ』では、団地での噂話についての話が出てくる。これについて語り手は、噂の内容よりも、いったいどういう経緯で噂が出回っているのかということに興味を持つ。「夜の姉妹団」もある意味、夜の姉妹団に関する噂話とでも言える話で、しかしこちらの語り手は噂話がなぜ生まれるのだろうか、という原因に近づいていく。

 


12/27

仕事。 
ちかごろ浮ついている。手のひらに棒を垂直にのせてバランスをとろうと思うのだけど、うまくやろうと力がはいってしまい棒がフラフラと手のひらから落ちそうになってしまうような感じとでも言えばいいだろうか。
 
正月休みを控えたよろこびと、漠然とした将来の不安とが良い感じ波長を合わせているだけなのかもしれない。 

たくさん文章を書いても、「気分」のようなふわっとした観念しか出てこない。 

長谷川四郎が「一つの感想」という短い文章のなかで書いている。 

生活記録について、それはどう書くべし、などということはないと、わたしは思っている。各々それぞれ自分の生活に即して書けばよいことだ。ただ根本的な態度として、観念性の排除が大切だ、といえるだろう。

 

日記は生活記録だろうか。生活記録だといえる日記はある。 
文章には、一度記され、何度も書き直されるものがある。昨日書いた文章を今日さらに書き加えて、明日さらに書き減らす。作品とよばれるような文章はそのようなものだろう。とするならば、書くということは、水を飲むとか、アイロンをかけるなどといった限られた時間のなかでそれも一回で行われる行為とはことなる。 
日記はそのような文章とは異なるかもしれない。書きっぱなし。朝起きてコップに水を注いで飲むときの、「飲む」のように夜寝るまえに日記を「書く」。夜寝る前に暖かい牛乳を飲むときにの、「飲む」のように朝起きて日記を「書く」。 
生活とは、書いた内ようや食べた内よう、ねむったときにどんな夢をみたかということよりも書いた食べた寝たというそれぞれの行為が打ち叩く強固な反復のリズムであり、それは形式だ。 
生活の記録を書くのではなくて、書くことが生活の記録のうちのひとつのような。 


12/28

いやな気分で一日すぎる。 
あまり本も読まず。 
明日が終われば年内の仕事は終わるので、がんばろうと思う。


12/29

仕事納め。 
4日から仕事。2日の夕方くらいから、仕事初めが嫌でうんざりした気持ちになるだろうけど、元気でいられるようにしたい。 

(案の定、まったく絶望的な気分で、ブログの編集作業をしている。

 

祈り

☑︎ケツの穴に山手線が突っ込んじゃえばいいのに

☑︎おしゃれな美容院で五分刈りにされちゃえばいいのに

☑︎一等前後賞合わせて三億が当たったあげく

    その宝くじが春風にさらわれちゃえばいいのに

☑︎ごまといっしょにごりごりすり潰されちゃえばいいのに

☑︎油圧式円匙車で部屋ごと平らに均されちゃえばいいのに

☑︎すごくだいじな部分が根っこからもげちゃえばいいのに

聖母はトンプソンがお好き/小林大吾