悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

日記4/24~5/1

4/24

この前のこと。
電線に止まっていた鳥が数羽飛び立ち、飛び立たなかった鳥もいた。
飛び立った鳥を目で追おうとしたが、鳥らは同じ方向へ飛んでいくようでいても、そうではなく、数羽の鳥をひと固まりとして認識していたわたしの目は散らばっていく鳥らを不自然なもののように写し、ほどなく鳥らがおのおの一羽ずつの鳥であることを思い出す。どれか一羽を追うことに興味を感じず電線に目を戻せば何羽かの鳥がいて飛び立たなかったものがいたことに気がついたのだ。
飛び立たなかった鳥らは、飛び立たなかったという選択をしたようには見えず、飛び立っていった鳥など初めからいなかったかのように澄まして見えた。あまりに澄ました様子なので、次第にわたしが飛び立たなかった鳥だと思ったことは誤りではないかと思えてきた。

津島佑子『黙市』を少し読んだりする。明日は休みなので、油断していたらソファで寝ていた。

 

4/25

〈誰にも言えない猫との付き合いに気持を奪われている子ども。〉(黙市/津島佑子

会社の近くに野良猫がいる。誰にも言えない猫との付き合いに気持を奪われている様子の女の人を見かけるのだけど、それはそういう素ぶりなのかもと思っている。子どもではなくなってしまったから。いや、わたしは気持を奪われている振りをしてしまう。だからきっとその人もそうなのだと、思っているのかもしれない。対象と、視るという行為、の間にわたしという自意識が邪魔をする。

津島佑子の『黙市』はとても面白かった。11の短編は似たような状況が描かれるのだけど、それぞれ違った感じの良い文章があったりした。場所の書き方がとても好み。「島」の空き地も、「黙市」の六義園も、沼も浴室も良かった。


4/29

土曜日の夜からSと旅行へ行く。
旅行は数えるほどしか行ったことがないけれど、行くたびにやたらと歩いてしまう。今回もよく歩く。
あまり本など読まず、風景をみたりしてとても良い日を過ごすはすが、待ち時間や移動時間にぼやぼや本を読んだりする。
性格に難があるせいか友達がまったくいないわたしと唯一遊んでくれるSには感謝している。

 

4/30

なにもせず一日過ぎる。嘘。
小宮豊隆夏目漱石 中』を読んだりする。
「再び神経衰弱」の章は漱石がロンドンから帰ったあとのころについて書いていて、妻鏡子の文章を引用しつつ鏡子を批判する。弟子小宮対妻鏡子という感じでおかしい。どこかで鏡子と弟子らの軋轢について、文章を読んだ気がするけどどかだったか。
鏡子が、漱石の行動をなんでも「頭が悪くなった」せいだとするのも異常だけど、小宮の夫婦感のようなものも今からみればなかなか異常。

 

5/1

ネットをみてもテレビをみても、改元の話題ばかりで、辟易する。
ぼんやり本を読んだり、映画を観たりして一日過ごす。
『悪いやつら』と『タクシー運転手』を観る。
『悪いやつら』のハ・ジョンウ演じるチェ・ヒョンべはヤクザの親分で、大叔父であるチェ・ミンシクと手を組み勢力を拡大する。チェ・ミンシクは巧みな話術でさまざまな危機を乗り越えるのだけど、ミンシクの話術に翻弄されるヒョンべが異様に頭の悪い感じで、おかしい。『悪いやつら』の登場人物はみな他人を出し抜こうと知恵を働かせるなかヒョンべはどちらかといえば硬派なヤクザ、知能派というよりは武闘派で、ちょっとトロンとした目が頭の悪いよくいえばピュアな感じのキャラクターと相まって怖かった。

まだ何日か休みがあるので出歩いたりしたいところ。