悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

2021/02/27

風が強めに吹いて、みんなさみしいことだろう。
いや、あんがいそうでもないのかも。
家に帰って暖かいお湯で手を洗うと、暖かいってサイコー、全身で浸かりたい! と思うのだけど、いざお風呂に入るとなるとすごく面倒に思えてくる。
床でごろごろしていると、床がパカっと開いて、お風呂になっていて、そのままざぶんと浸かることができたら良いのに。
ところで、携帯やスマホで文章を書くことができるようになって、なにが画期的かといえば、あお向けで文章を書けるということなのではないか。
近代文学が例えば個人の内面に拘泥したり何かしら仰々しい主題を見つけたり、どことなく陰鬱な雰囲気をまとったりするのは、下をむいてばかりいるからなのだ。これは、書くという行為が根本的にうつむき加減で行う行為だからに違いない。
名曲「上を向いて歩こう」で、上を向いて歩くのは涙をこぼさないためなのであって、うつむき加減なら、そりゃ涙もぼろぼろこぼれるだろう。
しかし、21世紀の人類はあお向けで文章を書くすべを発明した。
するとどうだろう。めきめきと気分も明るくなるではないか。
ちょびっとお酒も飲んじゃって、なんだかお風呂に入るのが面倒だし、このまま寝てしまおっかななどと思いながらも、床がパカッと開く式のお風呂について思いめぐらすという生産的かつ陽気な思考を導き出したのは、すべてあお向けのおかげなのだ。
風が強めに吹いて、私はさみしい。