悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

冷たいごはん

ミールプレップというらしい。 何食分かのおかずをいっぺんにつくり、白米もろとも一食分ずつタッパーにつめて冷凍する。 youtubeでいろいろと安上がりで簡単に作れるものが見つかるので真似している。 お昼のお弁当として紹介しているものが多いけど、私は夜ご飯にしている。 帰宅して、電子レンジで温めるだけなので楽だ。 とはいえ、不満もある。うまく解凍できなかったり、冷凍前によく冷ましたつもりでも解凍すると汁っぽくなったりする。 特に、食べ始めてから、解凍しきれていない白米が口の中に入いると、とても残念な気持ちなる。ざらついた嫌な食感が舌にのこる。いったい誰の悲しみを思い浮かべたら良いというのか。

白米は温かいほうがいい。 でも、冷たい白米も嫌いじゃない。 母親に作ってもらったお弁当を思い出すからかもしれない。学生時代にひとりで食べていたお弁当を思い出すからかもしれない。いずれにしろ、かつてほど頻繁に食べることのなくなった冷たい白米を食べるとき、なにか遠くなってしまったものに、微かに触れるような気がするのだ。それがどのようなものであれ、遠くにあるものに触れることはほのかに暖かい。ああ、大人になると味覚が変わるというのは舌が思い出を湛えるからかもしれない、などと思ったりするのだ。

しかし、解凍しそこなった白米には何の思い出もない。ただただ生活をし損なった悲しみだけがある。ならば、あなたがいつかこの悲しみを思い浮かべてください。