悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

2020/10/26

寒くなってきたかと思うと、そうでもなく、夏の名残があったりする。
とはいえ朝晩は寒い。
慣れないせいか、いまの時期かいちばん寒く感じる。
もうしばらくしたら、いくらか慣れるだろうか。
寒いとなにもしたくなくなるので、いまのうちに冬のたのしみを用意しておきたい。
本をコートのポケットに入れるとか。夏の服は本を入れるほどのポケットはないので。
何かを身に着けて隠しもっていると心強い。
退屈に負けたりせず、本をポケットから取り出して読んでやるという勇ましい気持ちになるかもしれない。
気まずい空気のテーブルも、いざとなったら隙を見て本だって読めるんだぞと思うかもしれない。
他にもいろいろ身につけたら良いのかも。
拳銃はどうだろうか。うっかり転んだ拍子に暴発してしまったらどうだろうかと心配になってしまいそう。だから文庫本くらいがちょうどいいだろうか。あるいは、ちょっとした嘘とか秘密とか。
谷崎潤一郎の「秘密」をちょっと前に読んだ。語り手は女装して街を歩くのが好きなのだけど、女装そのものが好きだというよりは、変装して違う人に成りきっていてかつ周囲がそれに気づいていないことが好きな様子で、そういうのも心強いのかもしれない。
いや、半袖の時期でも嘘や秘密は持てるか。
他にも、寝る前に布団にもぐるのは良い。これは暖かい時期にはないたのしみだと感じる。
布団にはいるまえに靴下を脱ぐのも良い。
靴下は脱いだときの解放感が良い。
身に着けていたものから解放されるときはなんでも気持ちがいい。腕時計とか、肌着とかもそう。
締め付けられていればいるほど、解放感がある。
あれこれ、ぽんぽん脱ぎ捨てていきたい。感情とか言葉とか。
持ちたいのか、持ちたくないのか、よくわからない。