悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

2021/04/08

朝起きるたびに疲れを感じる。
この先ずっと私は疲れはてたままなのかもしれないと想像するとぎょっとしてしまい、その弾みでどうにか蒲団から抜け出す。
眠りが浅いのかもしれない。寝つきも悪いような気がしないでもない。
「疲れすぎて寝れない夜のために」という本が、本棚にある。
内容は知らない。読んだことがない。
眠れなくなる宇宙の話、という本ある。こちらも読んだことはない。本棚にもない。
チェーホフの「ねむい」では、子守をする少女はくたくたに疲れているのに子守をしているせいで眠ることが出来なかったため、子供を殺してしまう。
このごろチェーホフのことをよく考える。なにか別の本を読んでいて、チェーホフみたいだな、と思う。
その根拠はなんだろうとチェーホフの具体的な作品に思いをめぐらせるのだけど、「ねむい」しか思いだすことができない。
私にとって小説を読む、あるいは再読するとは、読まなかった間に生まれたその小説についてのあれやこれが、綺麗に間違っていたことに気づくことだ。
チェーホフの本をどれか読めば、たちまち私の「チェーホフみたいだな」が間違っていたことがわかるのだろう。
でも、今日はもう眠い。朝は遠い。時計の音を近づいてくる朝の足音に思い、身が凝る。眠りも遠い。
私の眠りはいったい誰に妨げられているのか。
さては、私自身では?
なんてね。