悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

その他

道具に馴染む

道具に馴染む昨年末、パイロットの万年筆をもらった。金ペンの入門的な一本だという。入門といっても、自分ではなかなか手がでない。それはMニブで、同じMでもステンレスのものとは書き味がまったくちがう。どちらが良いというわけではないのだけど、まった…

二人乗りの自転車に乗る、深刻な話をする

去年のいまごろのこと、私たちは昭和記念公園に遊びに行った。休日だったのでたくさんの人がいた。私たちは自転車で園内をまわることにした。普通のママチャリと二人乗りの自転車とを貸し出しており、私たちは二人乗りの自転車をレンタルした。漕ぎ始めると…

私にとって歩くこと

歩くことが好きだ。ただ、それはすごく消極的な形での好きかもしれない。積極的な、自らの未踏の地へと赴いて目を凝らしては街中を闊歩していくようなことは、べつに嫌いではないしむしろそれだって好きなのだとはいえ、頻繁にしていることではない。 散歩と…

父と母が一緒に暮らし始めたころ

父と母が一緒に暮らし始めたころ、若い二人は駅前にできたばかりの串焼き屋へ出かけた。行きつけにしうかな、なったらいいね、なんて話しながら。ところがその串焼き屋はあまり美味しくなく、さほど行かないまま、ほどなくして潰れた。 父だったか、母だった…

川原で映画を観るのはどう?

大学を卒業してアパートに引っ越したら壁が良い感じに白かったので、ボーナスが出るとプロジェクターを買った。いざ買ってみるとスクリーンも欲しくなったが、探し出すと面倒に思えてきて寝る前は白い壁に映して映画をみた。実際には映画をみたというかただ…

お見舞い

お見舞 Sのお見舞いへ行く。盲腸の手術のためで、数日もすれば退院できるらしい。行かなくても良いような気もしたけど、休みだったので行くことにした。なにか持っていこうと思った。盲腸の人に食べ物は持っていかないだろう。他には本くらいしか思い浮かば…

ソフトクリームソーダ

ユーモア 「あんまりにもユーモアがありすぎるせいでスベっちゃうんだ」と男は言った。わたしはあんまりにもユーモアがありすぎるせいでスベったりはしないと思った。 「ユーモアというのはある文脈を理解しないと意味がわからないことが多い。つまり普遍的…

わたしのためにあなたに書いてほしい文章のこと

ほんとうはあなたのためにわたしが書きたい文章のこと、と書きたいところだったのだけど、そこで言われるあなたはぽっかりと空いた穴だしけっきょくのところわたしでもあるので、ならいっそのこと、わたしのためにあなたに書いてほしい文章のこと、とでもし…

暖かい公園で本など読みたい

市街戦の跡地を猫が歩いていた。わたしはそのことを人から聞かされて、市街戦の跡地とはどのようなところだろうかと思った。動画で見たことのあるヨーロッパの景色や幕末の様子が浮かんだ。それらの場所を歩く猫の姿はふさわしいようにもふさわしくないよう…

ぼくたちの日々とか

冗談ばかりで 楽しすぎて体の奥まで 甘えたりしてありえない夢を見て 日々が過ぎる 「ぼくたちの日々」/スガシカオ ぼくらの日々 そのころ、ぼく自身は最悪の気分だったのだけど、ぼくらとしては気分の良い日が続いていて、本を読んだり音楽をきいたり、と…

逃走派

星野道夫は満員電車に乗って、その後アラスカへ行ったという話をきいた。それからは、電車に乗るときはアラスカのことを考えることにした。電車の中にシロクマがいたとしたらどうしようとか、ヘラジカがいたらどうしようとかそんなことだったと思う。ヨネク…