悪い慰め

感傷癖から抜け出すためのレッスン

骨のかなしみ

先日の投稿で、私の身体が曖昧だと書いたけれど、それは嘘だ。むしろそうなりたいという願望であったような気がする。だって、不安でたまらない夜を過ごしているけれど、こんなに暑いというのに溶けさえしないのだ。 どろどろに溶けてしまいそう。溶けてしま…

道具に馴染む

道具に馴染む昨年末、パイロットの万年筆をもらった。金ペンの入門的な一本だという。入門といっても、自分ではなかなか手がでない。それはMニブで、同じMでもステンレスのものとは書き味がまったくちがう。どちらが良いというわけではないのだけど、まった…

様子を見る

会社ではめんどうなことを「様子を見る」という場所に押し込んでいる。会社だけではない。いろんなことを「様子を見る」にしている。 様子を見つつ、サボって野球の動画を見る。マリーンズの佐々木投手。あまりにもよくわからないので笑ってしまう。すごくダ…

たどたどしく読む

つかれている。そんなこともないかもしれない。2年くらい、あまり本が読めていない。そのことにも慣れてきてしまった。少し前まで読みたい気分はあったけれど、それさえも次第に薄れてきているようである。それでも、惜しいというか残念な気持ちもあり、なん…

2023/01/12

印象的な出来事があった日を振り返るとき、その出来事以前の時間も、まるでその出来事に影響受けているかのように感じる。それは、振り返る私の視点がその出来事に影響を受けているからなのだろうけど、感覚としてとても不思議なものだと思う。 そのような印…

犬のたのしみ

幼いころ、私は外野手だったことがある。広々とした外野をたった三人で守ることの不安を知っているということだ。後ろに逸らしてはいけないという緊張を抱きながら、右中間を抜けようとするボールを追いかける。追いかける、という表現は内野手より、外野手…

2022/07/08

7時10に起きた。目覚めが悪い。曇っていると、たいてい目覚めが悪い。ような気がするけど、本当のところはわからない。毎日目覚めが悪いのに、曇っている日だけ、ああ曇っているからだと思っている可能性もありそうだ。曇っているといっても薄曇りで、暑くな…

2022/07/02

字が読みにくい気がする、と思ったらチカチカと視界がぼやけるというか、妙な感じがした。 先日、会社の健康診断のさいにレントゲンでひっかかり、大きい病院へ行ったところ、ナントカという聞きなれない肺のリンパが腫れる病気かもしれないと言われた。難病…

2022/06/18

大江健三郎『美しいアナベル・リイ』で、登場人物のサクラさんは「私」の書いた新潮文庫版『ロリータ』の解説を契機のひとつとする。大江健三郎は実際に『ロリータ』の解説を書いていて、私はそのことを知らなかったので、つまり『美しいアナベル・リイ』を…

2022/06/15

尾崎一雄「赤城行」を読む。 会社の昼休みのこと。なにか読もうとkindleアプリで本を開いたり閉じたりしていたら、先日車で群馬へ出かけたからか、赤城という字が目にとまった。 私は群馬といっても伊香保に出かけた。だから赤城とは別になんの関係もないと…

2022/06/09

病院へ行く。歩いて行こうと思ったが、家から出て歩き始めたら突然面倒に思えてきたので、電車で行く。途中で図書館により、借りていた本を返す。堀江敏幸と村田沙耶香のエッセイを借りる。新刊コーナーにフリオ・リャマサーレスの短編集があったのでパラパ…

2022/06/07

風呂からでると暑く感じる。この熱を冷まさないととてもじゃないが寝られる気がしない。暑くなってくるとそういう日が増える。真夏というような時期になると冷房をつけることにためらいがなくなるから、梅雨前くらいがもっともそのような日が多い。今からエ…

プールの裏側通信

みなさんこんにちは。お元気ですか。私はあまり元気ではありません。3ヶ月に一度くらいのペースで、郵便受けにガス料金値上げのお知らせが入っています。暑くなってきて、お湯を使う機会が減ったのでよかったですが、冬になったらどうなってしまうんだろうと…

2022/06/02

少し前のこと。最強どん兵衛というのがあるらしいときいてコンビニへ行ったが売っていなかった。私はカップ麺のなかでは、どん兵衛のそばがいちばん好きだ。いや、緑のたぬきかもしれない。中学生のころ、部活を引退して早く家に帰るようになるとなんだか空…

2022/05/31

静かな午後には、水の中にいるようだと思うことがある。 古いビルの一室にある事務所はコンクリートがむき出しになっていて、私以外には誰もいなかった。室内はほの暗いブルーの色合いを湛えていた。曇っているためか。窓は灰色だった。ちらちらと窓を眩しく…

二人乗りの自転車に乗る、深刻な話をする

去年のいまごろのこと、私たちは昭和記念公園に遊びに行った。休日だったのでたくさんの人がいた。私たちは自転車で園内をまわることにした。普通のママチャリと二人乗りの自転車とを貸し出しており、私たちは二人乗りの自転車をレンタルした。漕ぎ始めると…

私にとって歩くこと

歩くことが好きだ。ただ、それはすごく消極的な形での好きかもしれない。積極的な、自らの未踏の地へと赴いて目を凝らしては街中を闊歩していくようなことは、べつに嫌いではないしむしろそれだって好きなのだとはいえ、頻繁にしていることではない。 散歩と…

小声で書く

細字のペンにはまっている。手帳(というかメモというかノートというか)の紙面に神経質な字を書いている。先日もsarasa nanoという0.3ミリのボールペンを買った。グレー色。平日の昼間だというのにロフトが異様な数の中高生に埋め尽くされており、たまたま…

2022/02/24

先日のこと。ふらふら池袋駅あたりから新宿駅方面に歩いていた。池袋駅を出て、ジュンク堂の方へ向かう。そのまま明治通りを下ると『往来座』という古本屋がある。ちょっと覗いて見ようかと思ったが、閉まっていた。入りかけて、入口に「準備中」とあり、さ…

2022/02/18

ドナルド・クローヴァー主演のドラマ『アトランタ』の新シリーズがはじまるらしい。huluで配信されるのだろうか。まだ詳しいことはよく知らないけど。huluは未加入なので、だとすれば余計な出費が増えてしまう。『アトランタ』はすごく良いドラマだ。とても…

2022/02/14

昨晩雪が降った。お昼くらいから雨が降りはじめ、ずっと雨だったけど寝る前にカーテンを開けてみると、いつの間にか雪になっていた。朝起きるとすでに止んでいて積もるほどではなかった。道の端、車や屋根の上などにはわずかに残っていた。すでに溶け始めて…

2022/02/11

午前中に予定を終えると気持ちが良い。まだお昼前か、と嬉しくなる。 すでに一つの予定を完遂しているので、その後ダラダラしてしまっても、罪悪感がない。 だから予定は午前中に入れるべきだ。しかし、私にはあまり予定がない。美容室へ行ったりするくらい…

2022/02/02

味噌汁をこぼしてしまった。敷居のところが濡れてしまい、拭いたけれど、湿ったせいか引き戸の締まりが悪くなった。夕飯を食べ終えて温かいお茶でも飲みながら、本でも読もうと思い、黒豆茶を淹れた。ティーバッグを取り出そうとした時、お茶をこぼしてしま…

野村の舌

この前の休日のこと。ふいに牛丼を食べたくなった。めったにないことだ。歩いていける距離に松屋があったことを思い出し、昼食は松屋にした。松屋はまったくなじみのない注文システムになっていた。店内に入ると席につき、タッチパネルで注文する。しばらく…

年末年始のこと

年末年始は実家で「孤独のグルメ」を観ているうちに過ぎてしまった。父などは年末に「孤独のグルメ」をみることに、いくらか恒例行事感をおぼえているらしく、そのように言われると途端にシラケる気がしないでもない。 年末に「孤独のグルメ」をみることの良…

2022/01/08

雪が降ると喜んでしまう。周りの人が困ったりしているというのに、恥ずかしい、という気持ちもある。それでも、ほんのり嬉しい。私は悪人かもしれないと思うが、きっとそれほどでもないだろう。とりたてて悪というほどてもない無神経さのうちになにかしら人…

父と母が一緒に暮らし始めたころ

父と母が一緒に暮らし始めたころ、若い二人は駅前にできたばかりの串焼き屋へ出かけた。行きつけにしうかな、なったらいいね、なんて話しながら。ところがその串焼き屋はあまり美味しくなく、さほど行かないまま、ほどなくして潰れた。 父だったか、母だった…

雨が降っていたので暗かった

雨が降っていたので暗かった 朝、目が覚めるとあたりは暗く、まだ夜中なんじゃないかと思ったが朝だった。雨が降っていたので暗かったのだ。朝に雨が降るのは久しぶりに感じた。この時期は雨が降っていると、起きる時間でもまだ暗い。陽の光を浴びないと目覚…

クレープ屋をみつける

晴れていたので歩いていたらクレープ屋をみつけた。クレープはいつでも食べたい。生クリームとチョコだけのやつが好き。生地はあまりパリパリしてない方が好き。冷たい風に身を凝らせて薄く丸く伸ばされるクレープを眺める。両手で受けとるとそれは陽に似た…

フクロウをみた

辺鄙なところで育った。明け方になると、鳥の鳴き声で目が覚めた。持久走がある日はとても嫌でいつもより早く目が覚めてしまった。耳を澄ませても鳥の声がしない。雨が降っているからに違いない、と期待して雨戸を開けると晴れているということが何度もあっ…